接客、楽しんでますか?
緊張しいのぼくが、接客を楽しむために心がけていたことはたくさんあります。そして、その中でも特に意識していたことは、「お客様と店員」という関係を壊すことでした。
関係を壊すとはどういうことか?
「自分が客だったらどう感じるか?どう思うか?」を常に意識する
ぼくはとても緊張しやすい性格です。店員としてはもちろんですが、客としてもすごく緊張してしまいます。
だからこそ、自分が接客する立場になった時、もしも自分が客だったら緊張してしまうような店舗の雰囲気は作らないように心がけていました。
「自分が客だったらどう感じるか?」を考えて、嫌だと感じることはできる限りお客さまにやらないことを心がけていました。
販売しようという意識は緊張を与える
例えば、
- 丁寧でかしこまりすぎる接客用語
- 「もし良ければ試着してみてくださいね~」「どうぞ手にとって見てくださいね~」等の声かけ
ジーパンはカジュアルな洋服なので、かしこまりすぎる接客になるとお互いに緊張してしまいます。
また、お客さまへの最初の声かけとして「試着」や「手に取る」といったワードで接客をしてくるショップ店員もいますが、これも緊張をあおってしまうのでやめることにしました。
「接客」はものを売りつけることではありません。
むしろ「売りたい」という気持ちは、お客さまにストレートに伝わってしまうものです。「売りつけられるんじゃないか?」という不安は、その店員だけでなくその店舗のイメージも悪くなります。さらには、ブランドイメージにも影響してしまうので注意が必要です。
誰と買い物をするのが楽しいか?
自分が客だったとした時、どんな店員さん、どんなお店であれば「あ、この店、なんかいいなぁー」と感じるか?
お客さまそれぞれによって違うので、正解はひとつではありません。
それでも接客を楽しむためには、いちばん大切にしたいことです。
- 自分が買い物をする時、誰と買い物をするのが楽しいか?
- どんな雰囲気の場所で買い物をするのがリラックスできるか?
どうせ買い物をするなら楽しく買い物をしたいものです。それは自分もお客さまも同じことなのです。
あなたが買い物する時、誰と買い物をすると楽しいと感じるでしょうか?
それはやはり「友達」や「恋人」ではないでしょうか?
人によっては、お父さんやお母さん、兄、妹、祖母といった「家族」の人もいることでしょう。
なぜ、気の知れた親しい人と買い物をするのが楽しいのか?と言えば、
- 似合う、似合わないをはっきり言ってくれたり、
- 自分のセンスでは選ばないような服をチョイスしてくれたり、
- それが予想外にかっこよかったり、
- 洋服やブランド、流行りについて教えてくれたり、
- なにより「リラックス」して買い物ができる
といった理由ではないでしょうか。
気心知れた人と過ごす時間は楽しいものです。同じように、お客さまもリラックスして買い物がしたいのです。
だから、店員としてやるべきことは、お客さまとの間に、
- いかにリラックスできる空間をつくるか?
- いかにリラックスできる関係性を築くか?
これがとても大切だと思うのです。
「店員と客」という関係性ではいつまでたってもリラックスできません。
だからと言ってフランクになりすぎるのはよくありませんが、家族やともだち、恋人など、自分にとってすごく「大切なひと」という意識でお客様とのやりとりをすること。
ショップ店員として、ファッション性や外見、接客術、トーク術といったことも大切かもしれませんが、それ以上に大切にしたいことは心・気持ちをこめることなのです。
テクニックにたよる店員はうすっぺらい接客になりがち
リラックスしてもらおうとしているのかどうかはわかりませんが、しょっぱなから平然と「馴れ馴れしい接客」をしてくる店員をよく見かけます。
先ほども少しふれましたが、外見やトーク術、フランクなノリで接客してくる店員。
そうした接客が好きな人もいるかもしれませんが、ぼくは苦手です。フランクなだけならまだいいのですが、馴れ馴れしいを通り越し、ただただ失礼な店員が多いからです。
そうした店員と一緒にされることを、ぼくはすごく嫌っていましたが、ただ、親しみをこめた接客も「お客さまを緊張させないために」とやっている場合もありますから、すべて否定するわけではありません。お客さまの年齢や性別、雰囲気など、それぞれに合わせて接客している人は、すごく共感がもてます。
しかし、ただ闇雲になれなれしい接客をしている人は、すごく薄っぺらい接客になりがちです。そうした人間性は、お客さまにはすぐに見抜かれてしまいますので注意が必要です。
お客様が緊張する理由
しかし、そもそもなぜお客さまは緊張するのでしょうか?
ショップ店員として接客をする前は、ユニクロですら服屋に入るのが苦手でした。
入店でさえ緊張するのに、洋服を買うなんてなったら、試着したり丈をなおしたりしなくちゃいけないから、もうハードル高すぎです。
想像しただけで疲れてしまう。
ぼくはそんな人でした。だから、すごいわかります。
- 買わされるんじゃないだろうか?
- ただ見に来ただけなのに...声かけられるぅ...いやだぁ....
- ジーパン欲しいけど、どれを選んだらいいんだろう...ジーパン、多すぎ...
- もっと安く買えるところはないだろうか...
- この服、わたしに似合っているんだろうか...
- うはー店員がなんか奇抜な服着てる...あんな服売ってんの、ココ...
- 客が若い人ばっかだわ...なんか居づらいわぁ...
- 店の名前がわかんない...読めない...
- そもそも服屋に来たことないし、どこになにがあんの???
- 誰に聞けばいいの?
- どうやって聞けば良いの?
- 聞いたら笑われるかもしれない...
いろいろな不安をもっているものです。
その不安を解消してあげれば緊張を和らげることができ、お客さまに少しはリラックスしていただけるのではないでしょうか?
店員が最初にやるべきこと
つまり、店員として考えておくことは、
- 見るだけでもぜんぜん問題ない。
- もちろん買わなくても大丈夫。
- 洋服を手にとって、広げて、グチャグチャにしても大丈夫。むしろぐちゃぐちゃにしてください。
- あ、試着ですか。どーぞ、どーぞ、あちらです。
- ついて行ったりしないんで、あちらの試着室、ご自由にお使いください。
- わからいことがあったら、お声かけください、なんでも正直にお答えします!
店員がお客さまに対して最初にやるべきことは商品やブランドの説明ではありません。試着の案内でもありません。
お客様の不安をひとつひとつ解消することです。
たとえ、不安が解消できなかったとしても、その努力や過程がお客さまに伝われば、お客さまも少しは心開いてくれるはずです。
そして、お客さまはみんな特別扱いされたいです。それはどんな店でも言えることですが、特に「洋服に興味があるお客さまはその願望が強い」のではないでしょうか。
だって「かっこよくなりたい」「スタイルよくみせたい」潜在的にそういう気持ちがあるから洋服を探しにきているのであり、それは褒められたい、認められたいという気持ちの表れでもあるからです。
さいごに
ショッピングセンターで働いていたとき、仕事中に「あのぉ...ごはん食べたいんですけど、一緒に食べてもらえませんか?」と声をかけられたことがありました。
それは、以前に接客をしたことのあるお客さまでしたが、なにも買わずにお帰りになったお客さまでした。
その方は「大の人間嫌い」でした。
どうやら、ぼくの接客を気に入ってくれたらしく、一人でごはんを食べるにもどこでなにを注文していいのかわからず悩んだ末、ぼくのところに相談にきたそうです。
店は営業中でしたが、ぼくは迷わず店長に「お客さまとご飯食べてきまーす」めちゃくちゃ怒られました。
が、結果的に洋服も買って行ってくれました。しかも大量に。
たくさん買って行ってくれたのは偶然ですが、嬉しかったのはその後も通ってくれたという事実です。
ぼくはその時、こう感じました。
「客と店と店員」という枠組みにとらわれていると、いつまでも接客は楽しめないし、その緊張感はお客さまにも伝わってしまうのだろうな、と。
売上なんて正直どうでもいいのです。
まず考えるべきことは、店員としてお客さまになにができるのか?お客さまがどうなりたいのか?
その時間と体験を共有することで、店員である自分もお客さまも楽しんでいただければ、結果的に店の利益、売上につながるのです。
一般常識として、あるいはショップ店員としては良くないのかもしれませんが、接客販売員として楽しいと感じるところはそういうことなのだろうと感じています。
ではでは。
これから接客をはじめるあなたが、ひとりでも多くのお客さまを楽しませてくれると信じて。