Wash and dry jeans and shrink  

デニムマニュアル

ジーパンの特徴は「縮む」そして「伸びる」。だから穿きやすくなる。

ジーパン屋の店員として避けては通れない、大切な仕事のひとつ。それはジーパンの丈直しです。

ジーパンの丈直しはすごく緊張するしごとです。なぜなら「お客様の洋服」を切ったり縫ったりするからです。それはただ切って縫うといった単純な作業ではなく「ジーパンの特徴」を理解しておく必要があります。

丈を直したときはちょうど良い長さでも着ているうちに思っていた長さではなくなってしまうこともあります。この記事ではジーパン初心者のために「ジーパンの特徴」について書いてみたいとおもいます。ジーパンの種類やサイズ選びの参考になればさいわいです。

ジーパンは縮む

ジーパンの特徴はいろいろとありますが、その中のひとつに「縮む」という性質があります。正確に書くと、いちど水に濡れたジーパンは乾く過程のなかで縮んでいきます。

これはジーパンに限った話ではなくデニムをはじめとした「綿」という生地・素材の持つ特徴ではありますが、ジーパンは特に縮みやすいと言われています。では、なぜジーパンは縮みやすいのでしょうか。

縮みの影響を受けやすい箇所は丈とウエスト

ジーパンは洗って水に濡れ、乾くと縮みます。特に縮みの影響を特に受けやすいのが足をとおす脚部(丈)とウエスト部分です。

縮みやすい理由のひとつはデニムという生地が「綾織り」という織り方で作られた生地であることが関係しています。綾織りで織られた生地は「ジーパンはなぜ縮むのか?」という記事にも書いたように「伸縮性」がいちばんの特徴といえる生地なのです。

綾織りのデニム生地には伸び縮みしやすい向きがあります。ジーパンの脚部は横方向よりも縦方向に、ウエスト部分は縦方向よりも横方向に伸縮しやすい向きで縫製されており、これがジーパンが縮みやすい理由のひとつになっています。

さらにジーパンは綿のデニム生地で作られているのが基本です。綿は濡れて乾くときに縮むという性質があり、こうした生地の特徴があわさって丈とウエストが縮みやすいのです。

ジーパンは乾くスピードによって縮みぐあいが変わる

水に濡らし乾かすことで縮むというジーパンの特徴ですが、じつはもうひとつ気をつけてほしいことがあります。

それは「乾くまでのスピードによって縮み具合が変化する」ということです。これはジーパンも含めた「綿」という素材の特徴なのですが、乾くスピードが速いと縮みも大きくなります。例えば、ジーパンを乾燥機にいれて急速に乾かすと丈もウエスト大きく縮んでしまいます。太陽がさんさんと照らす天気の良い日、直射日光をガンガンいあててジーパンを乾かすというのも注意が必要です。

急激に乾かすと丈とウエストといったサイズ感だけではなくシルエットが変わってしまうなんてこともありますから、くれぐれも気をつけてくださいね。実際にぼくも乾燥機をつかってだめにしたジーパンが何本もあります。購入した最初の洗濯が原因で穿かなくなったジーパンもあります。

せっかく購入したジーパンです。こうしたサイズ感やシルエットの変化といった悪い印象によってジーパンが穿かれなくなってしまうのは、ジーパン好きとしては悲しい気持ちになってしまいます。

ジーパンは日陰でゆっくり乾かすのがおすすめ

ジーパンの変形が心配ならば日陰でゆっくりと乾かしてみましょう。そうすことで縮みや変形もちいさくなり、穿けなくなるということはないはずです。

ジーパンの特徴を知ったうえで丈直しをする店員として思うことは、お客さまそれぞれで洗濯の方法もちがいますし、メーカーや型番によってジーパンそれぞれの伸縮率もちがいます。なかには同じメーカーで同じ型番、同じデニム生地が使われているはずのジーパンでも、縮み具合に個体差があったりもするわけで、正直、そのジーパンがどれくらい縮むのかなんてわかりません。

そんなわけで、購入していただいたお客様のジーパンにハサミを入れ工業用ミシンで縫うわけですから、ほんとうにめちゃくちゃ緊張します。

お客様におつたえしたいことはジーパンの丈はいちどでピッタリにしようとするのではなく、はじめの数回の洗濯は日陰でゆっくりと干して乾すようにし、だんだんとサイズ感が落ち着いてきたら丈の長さを合わせてほしい。それで、もし丈が長いと感じたら購入した店舗に丈直しの依頼をしてみることをおすすめします。

自分の店で購入してくれたお客様ならほとんどの場合、無料で直してくれるはずです。購入したお店でなくても数百円で直してくれるところも多いです。洋服のリメイク屋さんといったところでも丈直しはやってくれます。

ウエストは穿くとまた伸びる

ちなみに、ウエスト部分も洗濯をすると縮みますが、着用して立ったり座ったり、日常生活での通常の動作をするだけで、ちょうど良いサイズ感になるはずです。

ウエスト部分は力が加わりやすい部分であり横方向に伸びやすいので、着用を繰り返すことで購入時よりもむしろ緩くなることもあります。ですから、丈の長さと同様にウエストのサイズ選びにも十分に注意が必要です。

  • あのメーカーのだからサイズはこれで大丈夫!
  • このまえ購入したのと同じ型番だから大丈夫!
  • とりあえず穿ければなんでも大丈夫!

といった方でもかならず試着することをおすすめします。

特に最近では、ジーパンの種類も増えてきましたし、ストレート、ワイド、スリム、スキニー、シガレット...と呼びかたも豊富です。シルエット、太さ、股上の深さ、ウエスト周りの作り、生地...ほんとうにいろいろあるので試着はぜひともしてみてほしいです。

試着するとなんか買わなきゃいけないような気がして・・・

その気持ち、すごくわかります。買わせようとしてきて嫌な気持ちになる店員がいる店では買わないことをすすめますが、ジーパンや洋服の購入で後悔したくなければ、店員のことは気にせずにどんどんと試着してほしいとおもいます。

ジーパンの縮みはどれくらい?

ところで、ジーパンは縮むので丈直しのときは「すこし長めにしあげる」というのが一般的です。

一般的なジーパンなら「1インチ(=約2.5㎝)」を目安に長めにしあげる

ユニクロをはじめとするファストファッションやジーパン量販店などで販売されているジーパンは、メーカー側でなんどか洗ってあるのが一般的です。こうした洗ってあるだけで色落ちなどの加工もされていないジーパンは「ワンウォッシュ」や「リンス」と呼ばれています。

しかし、こうしたワンウォッシュやリンスといったジーパンでも、その後の洗濯でまだ縮む可能性のほうがたかいです。購入して丈を直すときには「最初の洗濯で1インチ程度は縮むので長めにしあげます」と店員に言われるかとおもいますが、基本的にはそれにしたがう方がよいです。

ちなみに1インチとは約2.5㎝。

最近では、ジーパンのサイズは「センチ」や「S・M・L」などの表記もありますが、ジーパンのサイズ表記は「インチ」が一般的で、インチ表記をセンチ表記に直しているので「76㎝」や「84㎝」といった中途半端な数字となっています。

丈を直すとき、店員に「1㎝みじかくして」などセンチで伝えても問題ありません。

リジッドの最低でも「2インチ」の縮みがあることを理解しておく

ジーパンの中には、先ほどのワンウォッシュやリンスとは違いメーカー側でも洗濯をはじめいっさい加工されていないジーパンがあり、一般的に「リジッド(RIGID)」や「生デニム(RAW DENIM」、「ノンウォッシュ」などと呼ばれています。この糊付けされたままの状態のジーパンは、1回目、2回目の洗濯によって特におおきく縮みやすいため注意が必要です。

ジーパンの生地であるデニムは製造する過程で「糊付け」されます。

糊付けされたデニム生地はゴワゴワとしていて固さがあり、ジーパンとしての穿き心地はあまりよくありません。そのため近年では洗濯して糊を落として柔らかさのあるジーパンとして販売されることがほとんどですが、リジッドはジーパン本来の良さである経年変化や色落ちを最大限に楽しむことができるためジーンズ愛好家をはじめとするたくさんの人に親しまれているということもあり、もちろんいまでも製造されています。

ちなみにリジッドについては防縮加工されたものと防縮加工されていないものとの2種類があり、防縮加工は「サンフォライズド加工」などとも呼ばれています。防縮加工されたデニム生地は糊付けされてはいますが縮みのすくない生地となっていて、完全未加工の生デニムとはちがう生地となっています。

購入を検討しているジーパンに「リジッド」「生デニム」「ノンウォッシュ」といった商品説明があるときは、念のため、各ショップ販売員やメーカーに問い合わせるのが確実です。

リーバイス501はその特徴である伸縮性の高さを「Shrink to Fit」という言葉で表しています。この表記があれば防縮加工はされていないジーパンということです。

リジッドの501の中でも特に縮みやすいとされているのが「47501」で、一般的には丈もウエストも2インチ(約5㎝)以上は縮むと言われています。ぼくもこれまでにLVCの47501を購入したことがあり、洗濯方法や糊の落ち具合など、その時の状況によって多少の差はありますが、丈もウエストも5㎝どころじゃなくてすっごい縮みます。足のシルエットも変化して細くなります。

いや、これ、ほんとにめちゃくちゃ縮むので人生でいちどは試してほしいです。

ジーパンの縮みは弱点ではあるが最大のメリットでもある

ジーパンの縮みやすいという特徴は弱点や短所と思われがちですが、個人的にはメリットだと感じています。生地が縮みやすいということは、裏をかえせば輪ゴムのように「伸びやすい」とも言えるからです。

この伸び縮み、つまり「伸縮性」がデニムという生地で作られたジーパンの最大の特徴であり、それこそが長いあいだ、たくさんの人に愛されて続けている理由でしょう。

丈の長さについては洗うと縮んでしまい元の長さに戻すのはむずかしいので慎重に長さを合わせる必要がありますが、動きの多い腰回りについて言えばこの伸縮性はメリットと言えるでしょう。

お気に入りのジーパンを穿いてお出かけして、立ったり座ったり。そして一日がおわって洗濯をして。今度はデートでジーパンを穿いて・・・

ジーパンと一緒にそういった日常の生活をおくることで、自然とじぶんの体型や動きにフィットした形に変化していく。それがデニムという生地で作られたジーパンの特徴であり、縮みの最大のメリットだと思うのです。

ジャストフィットで穿きつづけたいなら購入時はピッタリに。もしくピタピタですこしキツイくらいのサイズが良いでしょう。

特に女性の方!!

大きめでゆとりのあるサイズは選ばないようにしましょう。同じジーンズでもウエストのサイズが大きくればシルエットはもちろん太くなります。つまりウエストサイズが小さくなればジーパンのシルエットもスッキリとして足も長くみえます。

もちろん「楽にはきたい」とか「ゆったりはきたい」という理由なら、サイズをあげてもかまいません。ボーイッシュでラフにジーパンを着こなすのもありでしょう。

ジーパンの特徴「伸びる」「縮む」まとめ

ジーンズは伸びたり縮んだりします。その特徴によって「ジーパンはその人に合わせて変化していく」のです。

つまり!

ジーンズはあなたとともに変化して成長してくれる。そしていつもそばで見守ってくれている。そんな良きパートナーなのです。

ちょっと大げさな言い方かもしれませんが、そんなジーパンに出会ってほしいと心からおもっています。

ではでは!

関連記事

スポンサーリンク

  • この記事を書いた人
  • 最新記事

Jean@でにまに管理人

元ジーパンショップ店員。約5年間アパレル業界で仕事をするが精神的体調不良により仕事を辞めて約1年半療養。療養期間中に自宅でできる仕事をさがしてサイト運営やWebライティングにたどりつく。現在は自宅でブログやサイトの運営、Webライター、ネット通販などで生計を立てながら、知人の店舗の運営を手伝ったり、サイト運営やWeb活用のアドバイスをおこなったりしています。

-デニムマニュアル
-, , , ,